2017年7月4日 星期二
た人が一番近い
「だってね~、篠塚宗太郎って、うちの宗と同じ名前なんだもの。」
宗ちゃんと同じ名前の、6代目の篠塚家のお殿様は、あのちんまりとした若様のことだ。
二人はあたしが席を外した後、家系図を見せてもらったそうだ。
現代まで連綿と続く篠塚の一族。
長子、篠塚宗太郎正英の名の下には、妻と子の名前が記載されていたらしい。
そこから長く続く、篠塚家。
若様は6歳で亡くなったはずなのに????
何で、妻子がいるの?
おかしいです???
「あの時おれには、先輩が酔っ払っているように見ましたけど?」
爽やか高校生は、赤面した。
「親父のチューハイが、回ってたんだ。申し訳ない。」
気の毒なほど、恐縮する。
「ああ、それで足元ふらついていたんだ。」
「それで、やっと判りましたよ。やっぱり、昨日のは、まぐれですね。」
「県代表に、勝てるわけないですって。」
「従姉妹のこいつ真子っていうんですけど、一応預かってるんで何かあったら俺の責任というか???」
?正直、後が怖いんで、頑張りました。」
あたしも笑う。
(上手い嘘つくね、宗ちゃん。)
「ああいうのって、ビギナーズ?ラックっていうんですよね~。素人精子 健康の宗ちゃんが、有段者にかなうわけないじゃないですか。」
未成年飲酒の高校生も、一緒に笑顔になった。
「そうか。ともかくごめんな。」
「貸しにしといてくれ。
篠塚に何かあったら、俺なんでもするから。」
やたらと爽やかに剣士は退場した。
案外、若様の武術指南とかだったりしてね。
「そうじゃな???。」
「確かにあやつは、わたしの武術指南の榊原図書之介に似ておる気がするぞ。」
おっと???。
神出鬼没はやめてください???若様。
「若様。さっきの人が???(あ、名前聞くの忘れちゃった)お詫びにって冷えたスイカ持ってきてくれたんだけど、食べる?」
「スイカ?」
宗ちゃんは、中々察しがいい。
若様は宗ちゃんに任せて、あたしはおばあちゃんと話をする。
向こうの方で、「昔はこのように大きなものはなかったがの」と、おいしいスイカに感動する若様の声がしていた???
おばあちゃんの話は、あたしを驚愕させた。
それを思いつかなかった、鈍感なあたし。
「篠塚宗太郎正英は、双子だったのよ。」
「どうやら、長い間子ができなかった、篠塚の領主は大層喜んだそうなんだけど、当時武士の社会では双子というのはお家騒動の火種になるとして歓迎されなかったのね。」
そんな話は、どこかで聞いたことがあった。
「ご重役は、「畜生腹」として生まれて間もない、篠塚家の嫡子をどうするか何日も相談したけど、どんなに議論を尽くしても結論は出なかったみたい。
普通は、一方は死産として奥方に見せる前に殺してしまうか、遠くへ養子にやるらしいんだけど???。」
お産を終えたばかりの奥方は、二人の可愛い男の子を取り上げられまいとして抱えて離さなかったみたいだった。
「ずっと泣いてばかりいて、血の道の発作を起こす奥方の哀れな姿に、とうと精弱う篠塚の領主は、二人の男の子を手元に置くことに決めたそうなの。
考えあぐねた末、出した答えはね。
戦乱の世だったから、当主の「影」としてなら役に立つこともあるだろうですって???」
血の道というのは、今で言う精神疾患のことだそうだ。
「奥方は、殺されてしまうよりは良いと納得したの。
それから、兄は篠塚の6代目として弟は「影」として、密かに育てられることになったそうなの。」
若様は、ちゃんとその時代に居た。
「だから、表向き一人生まれたことにして、名前は二人して「宗太郎」と呼ばれることになったの。
だけど、領主と奥方はそう呼んだけど、弟は家臣からは名もない「影様」と呼ばれたそうよ。」
おばあちゃんからそんな話を聞き、あたしの涙腺は、決壊寸前になっていた。
だって、居ながらにして存在を否定されるなんて???。
若様の、生まれてきた意味はなんなの?
生まれつき誰も知らない?影?だなんて、悲しすぎる???
当時の菩提寺の住職が、領主様から若様の行く末を相談され、覚書としてつけていたものを拝借して読ませていただいたそうだ。
きっと、あたしには漢字が難しくて読めないんだろうなと思う。
???城の奥に格子を入れた居室を作り、部屋に入れるのは乳母と守役、家老の数人だけ。
冷めた食事も箱膳で運ばれ、陽の差さぬ奥で乳母と二人静かにひっそりと影としての心得を説かれ、暮らす、若様。
子供らしく声を上げて走ることも、お日さまの下で風車をまわすことも、禁じられていた。
いつか本当の若様が初陣したときや、若様の命に決定的な危精子健康え険が迫った時の身代わりの「影」としてだけ存在したもう一人の宗太郎。
「何も、真子が泣くことはあるまい。」
「宗ちゃん???」
???スイカの種が、ほっぺたにくっついてる???
「わたしは父上からも望まれて生まれたと、母上に言われたのだ。」
「今は儚き身の上なれど、兄上に有事の折には必ずお役に立つ所存であった。」
「だからわたしは、兄上のお役に立つように武芸も勉学も懸命に励んだのだ。」
「遠くから兄上の所作を真似しての。
入れ替わった武芸の時間だけは、わたしは誰からも影殿とは呼ばれなかった。」
宗太郎は、二人存在して一人は城の奥座敷に閉じ込められ、一人は落ち延びて命ながらえたのだった。
「ごめんください。」
玄関で、誰かの声がする。
取り込み中のおばあちゃんの部屋はずなので、あたしは大急ぎで玄関に向かった。
「あ???っ。」
小さく漏れてしまった不満の声。
「先日は、失礼しました。」
夏祭りで、絡んできた高校生の剣道部????
剣道部は室内練習なのに、あなた色黒すぎでしょ???と、ちょっと思った。
「謝りに来た。」
手土産に、冷えた大きなスイカを持って、少年は夜に出会っとは同一人物に見えないくらい、爽やかだった。
「あ、ありがとうございます。」
「それで、あの宗君に会いたいんだけど、ご在宅でしょうか?」
「え???と。居るにはいるんだけど、ちょっと待ってて下さい???」
様子を伺ったけど、おばあちゃんの部屋から、宗ちゃんが出てくる様子はなかった。
「ふ~ん???こやつ、祭りの夜に、絡んできた奴か。」
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